(さんざんまたせてごめんなさい),スズキコージ|自分の感性に自信がなくなってしまっているときにおすすめの絵本。

さんざん29

感銘を受けるものが何かというのは、まさに個人の価値観や経験に根差したものです。たとえば、芸術の世界では、ある人がゴッホの「ひまわり」に感動を覚える一方で、別の人にとっては特別な感情を喚起しないかもしれません。それでも、周囲の意見に影響されて「いい」と思うように自分を説得することがあります。これは、社会的承認の欲求や共感を求める人間の本能から来るものかもしれません。

しかし、このような傾向は、私たちの感性や個性をゆっくりと枯渇させていく可能性があります。特に職場のような社会的環境では、個人の感性よりも集団の意見や上司の好みが優先されがちです。アルフレッドのように、広告のデザイン案を選ぶ際にも、自分の感性に従うよりも上司の好みに沿った選択をすることが多くなります。これは、単なる仕事の一環として許容されることもありますが、長期間にわたると自分の感性が疑問視され、自己の判断力を失ってしまう危険があります。

このような状況は、日本全国、さらには世界中の多くの職場で見られる現象でしょう。上司の顔色を窺いながら仕事を進める中で、自分の感性や創造性を犠牲にしている人は少なくないはずです。そんな中で、自己の感性を取り戻すための一助になるのが、絵本「さんざんまたせてごめんね」です。

この絵本は、物語性やストーリーテリングの面で特筆すべき点をアルフレッドは見出せなかったかもしれません。しかし、アフリカの民族服を連想させるような鮮やかな色使いは、彼の感性に深く訴えかけたのです。芸術においては、ストーリーよりも色彩や形、質感など、他の要素が強く感情に訴えかけることがあります。この絵本は、そうした視覚的な美しさを通じて、私たちの内に秘めた純粋な感受性を呼び覚ますことができるのです。

「さんざんまたせてごめんね」は、自分の内なる声に耳を傾ける機会を提供してくれます。絵本を通して、私たちは日常から離れ、自身の感性に集中する時間を持つことができるのです。また、絵本は子どもたちだけでなく、大人にとっても新たな発見やインスピレーションの源泉となりうるものです。それは、単なる物語を超えた、色彩や形の純粋な美しさを通じて、自分自身の内面と対話する機会を与えてくれるからです。

この絵本は、それぞれのページで異なる色彩が展開され、見る人によって全く異なる感情や思考を喚起します。それによって、私たちは自分がどの色に引かれるのか、どのパターンが心を動かすのかということを再発見することができるのです。そして、自分だけの感性を大切にし、他人の意見に惑わされることなく、自分自身の美的感覚を信じる勇気を持つことができるようになります。

結局のところ、「さんざんまたせてごめんね」は、絵本という形を借りた感性の探求であり、自己発見の旅でもあるのです。自分の感性を信じ、群衆に流されずに自己の意見を持つことの重要性を思い出させてくれます。アルフレッドのように、自分の感性に疑問を感じている人々にとって、この絵本は新たな視点を提供し、内面の声に耳を傾ける勇気を与えてくれるでしょう。そして、それは私たちが自分自身に正直でいることの大切さを教えてくれる貴重なレッスンなのです。

最期に、作者のスズキコージさんのホームページがあるようなので
リンクしておきます。
http://www.zuking.com/

かなり、独特の世界観なので好き嫌いがはっきりしてくると思います。
こういう独自性の強いものを見ると、普段、抑えている自分の感性がむくむくと起きあがってくるのではないでしょうか?

すずきこーじの世界 

アルフレッドからのヒント:時には好きなものは好き、嫌いなものは嫌いと言ってみる